ただ物を捨てるのではなく、自身の心のたまった塵も一緒に落とす
突然ですが、便利なものに囲まれた暮らしをしているにもかかわらず、その暮らしが幸せとは思えない。何かが満たされない。
もしそんなお悩みを抱えた方がいたらあなたはなんとアドバイスしてあげますか?
「便利な暮らし」をすることで「心の豊かさ」は手に入れられるのかといえば、そうとは言い切れないのです。
そこでご提案したいのが、本書「片付けはほんのひと手間 掃除の極意を禅に学ぶ 」にて取り上げられている「禅の考え方」を参考にしたお片付け方法です。
心の豊かさを手に入れること=お片付け? と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、詳しいことは今からご紹介いたします。
今回ご紹介することを実践していただくと、ただ物を捨てるのではなく、
自身の心のたまった塵も一緒に落とし、心豊かな暮らしができるようになる、という学びが得られることでしょう。
「掃除することで雑念を払い、それがシンプルな暮らしにつながる」
それでは具体的な方法を解説していきます。
一言でいうと「掃除することで雑念を払い、それがシンプルな暮らしにつながる」です。
本題に入る前に、シンプルで簡素な暮らしがなぜ「心の豊かさ」につながるのかということをもう少しご説明します。
本書では「シンプルで雑念のない生き方」とは暮らしに目を向けられ、生き方や生活環境を整えられるとし、
それが「心豊かな暮らし」につながる、としています。
つまり日々の暮らしで「心の豊かさ」を得るには、シンプルで簡素な暮らしを目指すといいということです。
シンプルで簡素な暮らしとは「必要なもののみに囲まれた雑念のないクリアな暮らし」のこと。
そのようなシンプルな暮らしを目指すには「掃除」が欠かせないとしています。
本書では掃除の心得、手法等を禅の言葉を交えながら解説されています。
ここでいう「掃除」とは汚れたところをきれいに清掃することはもちろん、
ものを捨てる行為についても一貫して「掃除」であるととらえています。
掃除によって心を整え、雑念を払い、物欲を抑え、最低限必要なものを持つように心がけるとシンプルで簡素な暮らしを目指せるのです。
ここではお掃除を通してシンプルな暮らしを目指すためのポイントを3つに絞ってみました!
・掃除とは、己の心を洗い、磨くこと
・お掃除は「汚れの引き算」
・持たずに暮らす、シンプルな生き方を目指す
ここからさらに詳しく、これらを一つ一つ解説していきます。
「掃除とは、己の心を洗い、磨くこと」
まずはじめに「掃除とは、己の心を洗い、磨くこと」について解説していきます。
人の心は乱れやすいものです。なのでそれを律する必要があります。
ではどうやって行うのか?
それが掃除を行うということです。掃除を行うことで己の心を磨き、整えることができるのです。
禅寺(ぜんでら)の修行僧は日頃掃除を行う際に「己を磨くつもりで磨きなさい」と教えられます。
乱雑な空間の中では心が乱れやすいため、妄想、執着心など雑念が生じやすいのです。
それらを律する、拭うための修行が掃除だと言えます。
同じ修行でも座禅が「静の修行」なら、掃除は「動の修行」なのです。
また禅の言葉に「空間をきちんと清浄に整えてこそ、心が整い、信心(神や仏を祈ること)が生まれる」という考えがあります。
これは「一掃除二信心」と呼ばれています。
つまり掃除とは汚れをとるのが目的ではなく心を磨くために行う行為であり、
また掃除とは日常のなかにあって無心になれる貴重な時間である。といえるのです。
ちなみに禅寺には私語が禁じられている場所が3つあります。
・浴司(よくす・風呂)
・僧堂(そうぞう・座禅を組む場所)、
・東司(とうす・トイレ) が当てはまります。
これらは「三黙道場」と呼ばれています。
なぜ私語が禁じられるのでしょうか。
つまりこれらの場所にいると人は気が緩みやすく、おしゃべりしたくなる場所といえるのです。
「おしゃべりしやすい」とはつまり「集中できずに雑念が混じる」ということ。
掃除は無心で行ってこそ清潔にできるものです。
先人の中にはトイレで悟りを開く者もいたとか。
それゆえ修行に最適であり、難しい場でもあるわけです。
一般の家のお風呂やトイレでも参考にしたい考え方ですね。
「お掃除は「汚れの引き算」」
続いて「お掃除は「汚れの引き算」」について解説していきます。
本書では「掃除に苦手意識を持つ理由」として、次の2つが主な原因であると書かれています。
・ものが多すぎる
・汚れをためてしまう
その2つの理由を解決していくにあたって本書では「汚れを引き算する」というメソッドを掲げています。
「汚れを引き算するための三つの心構え」
1.汚れる前に拭く
2.汚れたらすぐに拭く
3.汚さない工夫をする
それぞれの具体的な方法などはぜひ本書にてご確認いただきたいと思います。
こちらの3つの心得について、「汚れ」という言葉が強調されてはいますが、
汚れをものに置き換えて考えても、その場をきれいに保つという意味でつながりますね。
何かを得るよりもまずは「手放すことを考える」ことで、それが「不要なものを引き算する」ことにつながります。
こちらの「3つの心得」をもとに、ぜひものを減らす・処分する際のルールを作ってみてください。
ルールが自分のなかで確立すると、己を律する、物欲をコントロールすることができるようになります。
物欲をコントロールできれば気に入ったものだけを買うという考え方に変わりますし、
一度買ったものは大切に使おうとする、また物を減らすこと、つまり整理整頓の大原則であると言えます。
「持たずに暮らす、シンプルな生き方を目指す」
最後に「持たずに暮らす、シンプルな生き方を目指す」について解説していきます。
本書の著者、沖幸子さん、枡野俊明さんは共にドイツでの在住経験がある方々です。
ここではシンプルな暮らし・生き方について著者2名のドイツでの生活から見えてきた日本との相違点について、
特に参考になりそうなポイントをご紹介します。
・物欲というものは手に入れた一瞬が満たされるのみで、また別のものが欲しくなる
・住まいが整えられる人は、暮らしや生き方も整えられる
一つずつ見ていきましょう。
物欲というものは手に入れた一瞬が満たされるのみ
「物欲というものは手に入れた一瞬が満たされるのみで、また別のものが欲しくなる」
ほしいものを衝動買いしてストレスを発散しようということがありますが、結局それでも満たされないし、
物欲の切りがないということが起こります。
そんなときは「愛着のわく、いいものを持つ」と普段から心がけることが大事で、
それを行うことで衝動買いという行動にまずうつらなくなります。
別のものがほしくなるという考えをしないためにも選んだときに
長く使える・飽きないものをしっかり選んで買い物することを心がけたいですね。
住まいが整えられる人は、暮らしや生き方も整えられる
「住まいが整えられる人は、暮らしや生き方も整えられる」
こちらは筆者2名から見た日本人とドイツ人の違いについてのトークによるものです。
例えば ものと住まいの落差が大きい日本人がいたとしたら、自身の比較対象が他人に向きがちです。
つまり他人への見栄を張っているということです。
その点ドイツ人の暮らしと比較すると自身の比較対象は「自身の暮らし」に向いている傾向があり、
例えば自宅の「庭」や「窓先」に表れます。
BMW、アウディなど高級車を手に入れることよりも、
自宅の庭の手入れが行き届いていないとなればそちらの方が問題なのです。
著者の考え方としては、豊かな暮らしに大事なことは、自己評価よりも第三者の客観的な評価といえます。
つまり「煩悩を捨てよ、暮らしに目を向けよ」ということにつながるのです。"
【まとめ】
では最後にこの動画の考え方をまとめて振り返っていきます!
まず「シンプルな暮らしを目指すには掃除を通して心の塵を落とすことから」ということ
そして「「汚れの引き算」の考え方で実際に掃除やものを手放してみよう」ということ
便利なものに囲まれた暮らしをしていても心が満たされない、幸せかどうかわからないと感じたら、
シンプルな暮らし、つまり雑念がない心豊かな暮らしを目指してみることを
提案させていただきました。
シンプルな暮らしを目指すには、まずは掃除から始めましょう。
掃除をすることによって人の乱れた心は整えられ、己を律することで煩悩、雑念を断ち切ることができるのです。
心が整えられるようになったら雑念は断ち切られ、余計なものを買わなくなる、
つまり必要なものだけに囲まれて生活する、「シンプルで簡素な暮らし」に近づけるのです。
掃除を行う際は「汚れの引き算」を意識すること、文字通りの汚れをとる掃除や、
またものを手放す際にもこちらを活用していただくと、雑念を断ち切り心の塵を落とすことにつながっていくでしょう。